第24章 恋バナ
「……さわっていい?」
「いいよ」
ペトラにソーサーごと手渡す。
「うわっ、軽いね! それに…、すごく薄い。こんなこと言うのもなんだけど…、高そうだね…」
「……そうだね…。そういえば昔、お父さんが言ってた… “薄いカップは上等なんだよ、作るのに技術がいるんだ。なかには卵の殻みたいなのもあるんだ” って。だからこれは卵の殻まではいかないけど、かなり薄いと思うし高いかも…」
「割ったら大変! 返すね!」
高いかもと聞いて慌ててペトラは、カップ&ソーサーをマヤの手のひらに押し返した。
マヤは返されたカップ&ソーサーを箱の中に戻しながら、軽くため息をつく。
「……本当だね、割ったらどうしよう。なんだか怖くて使えないや…」
「ちょっと! そのまま箱に入れたまんま、使わないとか駄目だからね!」
ペトラの “高そうだね” 発言から、割ったらどうしよう、怖くて使えないとなったのに、そのペトラが目を吊り上げて怒っている。
「でも… もし割っちゃったら…」
「せっかく兵長がプレゼントしてくれたのに! もったいない!」
「それはそうだけど。でもだからこそ、兵長がくれたからこそ、余計に割りたくないっていうか…」
「要は割らなきゃいいのよ! そもそもマヤって今までカップとか割ったことあんの? なんかさ、割りそうにないんだけど?」
ペトラに質問されて、これまでの人生で食器を割ったことがあるのかを、しばし考える。
「……ないかも」
「でしょう! マヤはそんな気がした。私は割りまくってるけどね。だから割れるとか気にせずに使えばいいんだよ。大丈夫だって!」
「うん、わかった。割れないように気をつけて使うね。やっぱりせっかくのプレゼントだし使いたいもん」
「そうしなよ、それが正解だわ」
ペトラは満足そうに笑った。