第24章 恋バナ
「でさ、ずっと気になってたんだけど…」
笑顔を引っこめたペトラが何を言うのだろうかと、マヤは少々どきっとする。
「ん? なぁに?」
「なんで兵長にもらったティーカップじゃないのよ。それ、いつものカップじゃん」
じとっとした目でマヤの持っているティーカップを見つめている。
「あっ…、」
マヤが言い訳をしようとする前にペトラが。
「出し惜しみ? それともまさか、見せてくれないなんてこと… ないよね?」
「ないない!」
友のとんでもない言いぐさに慌てて否定する。
「箱に入ったままだし、さっきはバウムクーヘンだけ手に取って急いで部屋を出たから…、そんな出し惜しみなんて全然…!」
大浴場から帰ってきたマヤは部屋に入り入浴セットを置くと、代わりにバウムクーヘンだけを持ってペトラの部屋に行ったのだ。いつも使っている食器は、各階に一つある給湯室の棚に、各自置いてある。
明らかに焦って一生懸命に弁解しているマヤを見ていると、ペトラはぷっと笑ってしまった。
「わかってるよ! そんな必死にならなくても。今度見せてよと言いたいところだけど、兵長がくれた誕生日プレゼントだなんてめちゃくちゃ興味あるわ。今、見せてもらっていい?」
「もちろん! ちょっと待ってて、取ってくるね」
マヤはぴょんと跳ねるように立ち上がると、すごい速さで部屋を出ていった。
「あはは、うさぎみたい!」
ペトラは自身のベッドに置いてあるお気に入りのうさぎの顔のクッションを、ぎゅっと抱きしめながらひとり笑う。
マヤの部屋は隣。
すぐに戻ってきた。
「お待たせ」
「おかえり!」
マヤはペトラの向かいに腰をかけると、持っている箱のふたを開けて桔梗のティーカップ&ソーサーを取り出した。