第24章 恋バナ
ところ変わって、ペトラの私室。
大浴場から帰ってきたペトラとマヤは、紅茶とバウムクーヘンを囲んで今まさに乾杯しようとしている。
「マヤ、あらためてお誕生日おめでとう! 乾杯って変だけど… でも乾杯しかないよね!」
ペトラはティーカップを目の高さに掲げると乾杯の音頭をとった。
「マヤの誕生日と、兵長とのデートの成功に乾杯!」
「……ありがとう」
紅茶なのでエールでの乾杯のようにカップをカチンと合わせたりはしないが、乾杯の真似事を済ませる。
「成功… だったのかな…」
いつもの習慣どおりに香る紅茶の湯気を吸いこみながら、マヤはつぶやいた。
「当たり前じゃん! 自分が忘れてた誕生日まで祝ってくれたんでしょ?」
「もちろん、それはそうなんだけどね。私は本当に夢のような時間で幸せだったけど、兵長は大丈夫だったかな? とかちょっと心配で」
「何よそれ? なんか失敗でもしたの?」
「ううん…。でも荒馬と女で飲みすぎたってほどじゃないんだけど、ふわふわとほろ酔いくらいにはなっちゃって。もちろん記憶はあるし、失礼なことは言ってないとは思うけど… あんまり自信がない」
「大丈夫だよ! 別に普通に帰ってきたんだよね?」
「うん。……だと思う」
「気にしすぎだって! それにもしよ? もし何かやらかしてたら、今度会ったときにわかるんじゃない? だから兵長の態度が変だったら何かやらかしてるってことで謝ればいいと思うよ」
「そうだね」
「そうそう! さぁ、食べよう!」
ペトラは待ちきれないとばかりに、バウムクーヘンにかぶりついた。
「んんん!」
丸いバウムクーヘンを仲良く半分に切って、それぞれの皿に取り分けてあったのだが、さらにその半分… 四分の一個分をフォークで切って口に放りこんだペトラは、言葉にならない叫びを上げる。
「もう、ペトラったら一度に口に入れすぎ!」
マヤは笑いながら、自分は八分の一個分に切って口に入れた。
もぐもぐもぐ…。
「うん、甘さもちょうど良くって美味しいね!」
「んんんん!」
まだバウムクーヘンで口の中がいっぱいのペトラはしゃべることができずに、んんんん!っとうなりながらもうなずいた。