第24章 恋バナ
……また馬…。
ナナバとニファは声には出さなかったが全く同じことを思い、顔を見合わせた。
ハンジだけは、好反応を見せた。
「なるほど! 馬の双子もヒト同様にシンクロするんだね。面白い!」
「そうなんです。飼い葉を咀嚼して飲みこむ回数まで同じなんですよ?」
「ほぅ! ますます興味深い。実は前々から頭の片隅で考えていたんだけどね。巨人の生態は依然として謎ばかりだが、万が一同じ動きをする奇行種が二体、出現することがあったなら、それは双子と考えても差し支えないのだろうか… とかね?」
「……そうですね。でもそもそも生殖器が確認できず繁殖方法が不明ですから、親から生まれ落ちる子、さらにその兄弟という概念が当てはまるかどうかが問題で…。そうなるとシンクロ率の高い個体がいたとしても、それは双子ではなく… なんていうんでしょう? 複製… みたいなものかも…」
「あぁ、マヤ!」
常日頃から巨人に関する話題は、モブリット以外にはまともに聞いてもらえず欲求不満のハンジは、自身の巨人への考察を社交辞令の相槌ではなく、真摯に向き合った独自の意見を述べたマヤに最高級の愛をこめて抱きついた。
「ひゃっ!」
いきなり抱きつかれて小さな悲鳴を上げたマヤをひしと抱きしめ、頬ずりをする。
「やっぱマヤは最高だよ~! 今まで巨人の複製なんて独創的な意見は聞いたことがない。確かに大いにありえるね。そもそも行動の相似性がなかったにしろ、存在する巨人すべてがだよ? 一体の複製のバリエーションだという可能性だってあるんだ!」
「……そう… ですね… というかハンジ… さん、苦しい…」
ぎゅうぎゅうとハンジに抱きしめられて、すりすりと頬ずりされたマヤは首を絞められた鶏みたいになっている。
「ハンジさん、興奮しすぎ!」
見かねたナナバが、マヤからハンジを引き離した。