第24章 恋バナ
気にしないでくれ! と叫んで頭をかきむしっているハンジを見て、ナナバもニファも慌てて止めに入った。
「ちょっとストップ! せっかく洗ったのに髪がこんがらがる!」「そうですよ! キューティクルもはがれます!」
「止めないでくれ! いいんだ、私の髪なんかどうなっても。大切な部下の誕生日を憶えていない私の髪なんかぁ!」
悲惨な声でわめきながら、ますますかきむしるハンジの腕を、ナナバは掴んだ。
「もういいですから」
物理的に頭をかきむしることができなくなり、我に返る。
「……すまない。取り乱してしまったね」
「そうですよ、らしくない。ほら、ペトラもマヤも驚いてるじゃないですか」
先ほどから目の前で展開されているハンジ班の三人による少々騒がしいやり取りに、ペトラもマヤも口を挟む暇すらなく、ただただ口をあんぐりと開けて見ているしかなかった。
「ペトラ、驚かせてすまなかった。マヤも誕生日でもありリヴァイとデートした記念すべき日なのに悪かったね」
「「いえ! 別に全然、ハンジさんに謝ってもらうようなことは何も…!」」
マヤとペトラの声が重なる。
「すごいシンクロ率!」
ニファが目を丸くすれば、
「さすがいつも一緒にいる仲良しだよね」
と、ナナバも感心する。
「確か双子だと、なんでもかんでもシンクロする事例があるみたいだね。ペトラとマヤは双子なみの仲の良さという訳だね!」
ハンジが口にした “双子” に、マヤが反応する。
「それ、わかります! アレナとアレースも双子だからか同じ波長でいつも鳴くし、鼻息だってシンクロしまくりなんですよ?」
「「「………?」」」
突如出てきた聞き慣れない名前にハンジ班の三人はかたまる。
数秒ほどあとから、ペトラが三人に答えをくれた。
「アレナは私の馬で、アレースはオルオのです。双子なんですよね」