第24章 恋バナ
リヴァイ兵長に手を握られたという話題がすっと流れていき、マヤはほっと胸を撫で下ろした。
「街に戻って、夕食をいただきました。兵長の行きつけのお店です」
「“荒馬と女” かい?」
「そうです」
「あそこは代々、調査兵団幹部の行きつけだね」
「そうだったんですね。じゃあハンジさんも、よく行くの?」
「ここ最近は忙しくて、ヘルネにすら私用で行かなくなってるけど。でも… そうだね、プライベートで飲むとしたら “荒馬と女” だね。昔はよく飲みに行ったよ。あの店は余計な詮索をしてこないし、静かに飲むのにいいんだ」
……ハンジさんが “静かに飲む” なんて、ちょっと想像できないな…。
マヤがそう思っていると、ハンジがにやりと笑ってつけ足した。
「リヴァイはね、最初素直に “荒馬と女” に行かなかったんだ。あれは確か… 私とエルヴィンとでリヴァイを誘ったんだ。エルヴィンが団長、リヴァイが兵士長になったときにね。酒をおごって、さぁ君も我が調査兵団の幹部の一員だ、この “荒馬と女” は幹部みんなの行きつけなんだ、リヴァイ、君もひいきにするがいいと言ったらさ。何が気に食わなかったのか知らないけど、“荒馬と女” のライバル店でもある “片目のジャック” に次の日の夜に行ったんだ」
「……“片目のジャック” 、なんかすごい名前ですね」
「うん。店主のジャックが片目で眼帯をしてるんだ。その見かけは寡黙で渋い男に見えるんだけどね、実は口から生まれてきたんじゃないかってほどのおしゃべり、おまけに余計なこと言いの詮索好きで。案の定リヴァイは一回行っただけで辟易として “荒馬と女” に帰ってきたよ。だから皆の行きつけだからって最初に教えてやったのにさと思わないでもなかったけど、それ以来いつ見ても “荒馬と女” のカウンターで一人でちびちび飲んでるとこを見かけたからね…、あっ! ちびちび飲んでるっていうのは、リヴァイがチビなのとは関係ないよ!?」
「……わかってます…」