第24章 恋バナ
「あはは、兵長もマヤにかかったら馬と一緒なんだ。あれだね、兵長の馬も黒い毛並みだし、あの馬のたてがみをなでた感じなんだね」
ナナバがリヴァイ兵長の愛馬のオリオンのことを言い出したので、嬉しくなる。
「そうです。オリオンは本当に毛並みが艶やかで綺麗な馬です! 大好き…」
もう頭の中はオリオンのことしかなさそうな様子のマヤを見て、ハンジがリヴァイに同情する。
「マヤは馬の毛並みレベルでリヴァイの髪にふれたかもしれないけど、リヴァイは違うだろうに…。気の毒だねぇ」
「……兵長が気の毒… ですか?」
全く意味がわからないマヤ。
「そうだよ! やっと愛おしいマヤの指が自分にふれたと思ったら馬扱いだったとは… よもやリヴァイも思っていないだろうね」
“愛おしいマヤの指” などという言葉にマヤは赤面しながら反論する。
「ハンジさん! 何を言ってるんですか。兵長はぶしつけにも髪をさわってしまった私を、手首を掴んで制止されたんですよ」
「ちっちっちっ!」
ハンジは人さし指を立てて左右に振りながら、鳥のような謎の発声をする。
「わかってないねぇ! ほら、前に給湯室でもリヴァイはマヤの手首を掴んでいたじゃないか」
「……あれは!」
まだリヴァイ兵長のことを特別な存在として意識していなかったころ。
給湯室で兵長の私物の紅茶の缶を勝手にさわってしまって、手首を掴まれたのだ。
今となっては懐かしい。
「私が兵長の紅茶を…。っていうか、あのときもハンジさんは兵長が私の手を握ったとか言ってましたけど、違いますからね。給湯室も今日のも…」
必死で否定してくるマヤ。
……そろそろ次の話も聞きたいし、ここは折れるか。
ハンジは計算ずくで、マヤの意見を受け入れた。
「わかったよ、そうかもしれないね。それでマヤ、丘の次はどうしたんだい?」