第24章 恋バナ
「リヴァイの髪を? マヤが?」
「はい。夕陽に照らされて綺麗だったのでつい…。無意識のうちに手を伸ばしていて、兵長に手首を掴まれて自分のしたことに気づきました」
そのときのことを痛みとともに思い出して、マヤの胸は切なくなってしまう。
「……だから無礼な私を止めようとして兵長は手首を掴まれたんです」
「兵長は恐ろしいくらいの潔癖症だもんね。いきなり髪をさわったら確かにヤバいかも…。大丈夫だった?」
心配そうにニファが訊く。
「はい。掴まれたところは赤くなってしまって少し痛かったけど、自分が悪いので…」
「色っぽいスキンシップではないけど、じゃあ一応ふれあった訳だね…。でもまさかマヤの方から兵長にさわるなんて思いもしなかった。結構やるね!」
ナナバが感心したように片目をつぶれば、ペトラも得意そうに友達を自慢した。
「マヤって意外とやるときはやるんですよ」
皆が好反応を示してくれたので、マヤはほっとした。
「その勢いで次は抱きついちゃえ!」
とんでもないことを言い出すニファに慌てて説明する。
「あの確かに、髪が綺麗だったから私からさわっちゃったんですけど、でもその… さわりたいとかそういうんじゃなくって…。そんな抱きつくとか… ないですから!」
「え~、じゃあどういうつもりで、さわったのよ?」
「……それは、ええっと…」
ゆっくりと考えていたが、ぱっと一番しっくりくる感覚が見つかった。
「馬と一緒です!」
「……へ?」
「毛並みの綺麗な子がいたら、思わず手を伸ばしてなでるでしょう? そんな感じです」
「……全然わかんない」
ニファには理解不能だったようだ。
「馬好きなマヤらしいね」
普段からアルテミスを可愛がっていることを知っているペトラには、マヤの言いたい感覚がよく理解できた。