第24章 恋バナ
「ええ、そうですよ、なんにもないんです」
リヴァイ兵長とマヤの間に何もなかったと知って残念そうにしているニファにナナバが話しかけた。
「仕方ないよ、ニファ。私らとしては何かそういう体験談が欲しいところだが、ないものはないんだから。ハンジさんみたいに、諦めたもん勝ちだね」
「ですねぇ。あぁあ~、指一本くらいふれてたっていいのに」
「ふふ、すみません。なんにもなくて。指一本もふれ…」
“指一本もふれてない” と言いかけたマヤに突然、ある感触がよみがえった。
それは強い力で手首を掴まれた記憶。
……あっ…。
リヴァイ兵長のさらさらとした髪にふれた感覚も同時によみがえる。
……私… 兵長にふれてる…。
「あぁ! マヤがまた真っ赤になってる!」
もうすでにかなり赤くなっていて、これ以上どこをどうしたら赤くなれるのといった様子のマヤの顔だったが、確かに過去最高級に赤くなっている。いうなれば熟れた完熟トマトのように真っ赤っ赤だ。
「あれ、もしかしてマヤ…」
リヴァイとマヤのムフフ話は一旦諦めたハンジが、また首を突っこんできた。
「どうやら “指一本” 程度なら、リヴァイとふれあったようだね?」
「………」
赤い顔のままうつむいてしまったマヤに、ハンジは猫なで声を出した。
「恥ずかしがることはないよ。どんな状況だったのか教えてくれないか?」
「あの…、手首を掴まれました…」
「手首を? それはまたなんで?」
「それは… 私が、兵長の前髪をさわってしまって…」
「「「………???」」」
マヤ以外の全員が、あの兵長の前髪をマヤがさわるとは一体どういう状況? と疑問符を頭に浮かべた。