第24章 恋バナ
「なるほど。景色が、懐かしい故郷の丘をマヤに思い出させたんだね」
「はい」
「それでリヴァイは、マヤの思い出話を大人しく聞いていただけかい?」
「……そうですけど…」
それ以外に何があるの? という顔をするマヤ。
「ちょっとくらい他に何かあるんじゃないの? 抱き合ってないなら、手をつないだとか」
「つないでません!」
「え~、ホントに?」
「本当に」
「絶対の絶対に?」
ハンジはなかなか引き下がらない。
「絶対の絶対です」
「ちぇっ、つまーんないの!」
やっと引き下がったハンジの代わりにナナバが訊く。
「抱き合ったりとか手をつないだりとかはないだろうけどさ、こう… 何かの拍子に偶然当たっちゃったとか、そういうのもないの?」
「え?」
マヤが “え?” と声を出すのと同時にニファが叫ぶ。
「恋愛小説の定番ハプニング、事故チューね!」
本を読まないペトラが怪訝な様子でつぶやく。
「自己中? 自分勝手なアレ?」
「違うよ、ペトラ。偶然の出来事でくちびるが当たってキスしちゃうことなの。たとえば走って廊下の角を曲がったら、偶然に向こうからやってきた人とキスしちゃうとかそういう感じで…」
マヤが説明すると、ペトラは眉を寄せた。
「え~、何それ。好きな人だったらラッキーだけど、嫌いな相手としちゃったら最悪じゃん」
「うん、まぁそうだよね。でも小説だとあんまり好きではない人としちゃっても、それがきっかけで意識するようになって恋に発展することもあるのよ」
「へぇ…」
「そうそう、その事故チュー! マヤ、どうなの?」
ニファが興味津々な様子で身を乗り出してくる。
「もう…、ニファさんまで…。そんなのある訳ないじゃないですか」
「な~んだ、がっかり。本当になんにもないんだね」