第24章 恋バナ
「最初はどこに行ったんだい? カフェかい?」
マヤが答えやすいように、具体的に訊くハンジ。
「“カサブランカ” という紅茶専門店に連れていってもらいました」
「へぇ、紅茶専門店か… リヴァイらしいね。カサブランカ? ナナバ、知ってる?」
「ペネロペの路地を入っていったとこじゃないかな? 私は行ったことがないけど…」
「そうです。ペネロペの道の奥です。実家が紅茶屋の私ですけど、比べものにならないくらい茶葉の品揃えが豊富でした。それから壁一面に棚があるような大きなカップボードに、見たこともないめずらしいカップ&ソーサーがたくさん飾られていて…」
大好きな紅茶の話になると夢中になって、どんどん語ってしまう。
「それでね、気に入ったティーカップがあれば、それでお茶が飲めるんです! すごいと思いませんか?」
「そうだね、食器を自らチョイスできるというのは、なかなか興味深い手法だ」
ハンジが関心を示してくれて、マヤはあたかも自身が褒められたかのように嬉しい気持ちになる。
「リックさんの… あっ、そのお店のオーナーさんなんですけど、そのリックさんがブレンドした紅茶がものすごく美味しくて。スコーンもヤギミルクを使って焼いてるんですよ」
「「「ヤギミルク?」」」
皆一斉に反応した。
「はい、ヤギミルク… ヤギの乳です。これがあっさりとした優しい味のスコーンになる秘訣なんだそうです。本当に美味しかったですよ?」
「へぇ、そうなんだ。その店のこと知らないけど、行ってみたいな」
そうつぶやいたニファを、ナナバが誘う。
「今度、一緒に行こうか」
「了解!」
早速ニファとカサブランカに行く約束を取りつけたナナバを見て、マヤは心底嬉しく思った。
……本当に素敵なお店だし、みんなに知ってもらいたいなぁ。
にこにこしていると、ハンジから次の質問が飛んできた。
「紅茶屋のあとは、どうしたんだい? 買い物でもしたかな?」