第24章 恋バナ
……ナナバさんは多分、恋をしているけど…。だから私の方が先輩だなんてこと、全然ないはず…。
マヤは心の内でそう思って、そっとナナバをうかがう。
先ほどまで腕のストレッチをしていたが、今はその長くすらっとした脚を揉みほぐしながら涼しい顔をしていた。
でもマヤは、はっきりと憶えている。
……食堂でミケ分隊長とタゾロさんの後ろ姿を目で追っていたときの、ナナバさんの表情。潤んでいた瞳。
今ならよくわかる。
きっと私も、兵長の姿を目で追うときには同じように…。
でも、あのときナナバさんが見ていたのはどっちだったのかな。
分隊長? タゾロさん?
いつかナナバさんが話してくれたらいいな…。
マヤがナナバの恋について、あれやこれやと考えている間にも、おしゃべりはつづけられていた。
「確かに、あの兵長とデートしたマヤは恋の先輩かな」
ニファが少しだけ悔しそうに認める。そして矛先をペトラに向けた。
「ペトラはどうなの? 兵長のこと好きだよね?」
「えっ…」
自分は安全地帯にいると思っていたペトラは、唐突に話題を振られて驚いてしまった。
「なんで私が兵長のこと好きって…」
「そんなの見てたらわかるよ」
ニファが笑えば、ナナバも言い添える。
「食堂でも、いつも姿を追ってるしね」
「あはは、ばれてますよね。私、兵長派代表なんですよ。だからファンとしていつでも兵長を目で追うのは当然だし」
「……兵長派? あぁ…、さっき言ってた兵長か団長かって新兵のときのって話ね」
「そうです」
「それでちょっとこれ… 訊いていいかわかんないんだけど…」
ニファが口ごもっているので、ペトラは先をうながした。
「ん? なんですか? なんでも訊いてください?」
「じゃあ訊くけど。マヤと兵長がデートしたとか、平気なの?」