第24章 恋バナ
「そっか。前から兵長のことを好きだった訳ではないんだね。それならまぁ、納得かな」
ニファがそう言っているのを聞きながら、ナナバは思い出していた。
大浴場で一緒に、お湯を手のひらにすくった夜のことを。
あのときはマヤはまだ、はっきりとリヴァイ兵長への恋心を自覚していなかった。
……自分はたまたま、マヤの恋の始まりのあたりに、あのとき居合わせたんだな。
納得してくれたニファに対して、マヤが謝った。
「そうなんです、ニファさん。ほんと自分でも自分の気持ちがよくわからなかったり…。なんか… すみません…」
頭を下げられて、ニファは慌てる。
「いや、こっちこそごめん! 別に怒ったんじゃなくて、そんなの聞いてないよ~って思っただけだから。だってほら、私とマヤは恋嘘仲間なのにさ。知らないなんて、なんか淋しいもん」
恋嘘… ニファが貸してくれた “恋と嘘の成れの果て” が話に出てきて、マヤに笑顔が戻る。
「恋嘘仲間! ふふ、いい響きですね」
「でしょ? マヤだけが唯一、あの本の面白さをわかってくれる仲間なんだからね」
「はい!」
ニファとマヤが仲良く盛り上がっているところへ、ハンジが乱入する。
「その恋愛小説仲間なんだったらさ、ニファも誰かに恋してるのかい?」
「全然…。今は小説を読んでる方が楽しいって感じですかね」
「へぇ、そうなんだ。じゃあさ…」
今度はナナバがニファに訊く。
「新兵のときに、ニファの代でも団長とか兵長とか騒いでいたんだろう? それも興味なし?」
「そうですね。それこそマヤじゃないけど、ぴんと来ない感じだった」
「なるほど。まぁ、同意だけどね。私も団長や兵長のことは、なんとも思わないし」
とナナバがうなずけば、ハンジは嬉しそうににかっと笑った。
「なら恋に関しては、ニファやナナバよりマヤの方が先輩だね!」