第24章 恋バナ
「クラバット…?」
ニファの発言を受けて、今度はペトラが声を出した。
「なんかね、意識がなかったマヤが早く目を覚ましますようにと願いをこめて、兵長がマヤの胸元にクラバットを置いたんじゃないかってハンジさんが勘違いしたらしいの」
「……ふぅん…」
ニファの説明でもいまひとつ状況が飲みこめないペトラ。見兼ねたハンジが補足する。
「私がナナバと二人でマヤの身体を拭いたときに胸元にかけられていたんだ、リヴァイのクラバットがね。それを願掛けじゃないかと予想したんだ」
「なぜ兵長はクラバットを?」
「さぁ、それはわからない。ただ、マヤが言うには水がこぼれたときにクラバットで拭いたらしいから、何も深い意味なんてものはなかったということさ」
「……なるほど。そうなの、マヤ?」
完全にすっきりとしないペトラはマヤに訊く。
「うん…。私もよくわからないけど、こぼれた水をクラバットで拭いたことは確かよ」
「そうなんだ」
ペトラはひとまず、その話は納得した。
黙ったペトラを見て、ハンジが話題を元に戻す。
「壁外調査の一件もあって、マヤはリヴァイの手伝いをしようと思ったんだね」
「そうです」
マヤは素直にうなずく。
「そうか。その手伝いの礼にリヴァイが街に誘ったという訳なんだね」
ハンジにとって “礼” かどうかは、あまり重要ではなかった。
とにかく出かけた街で、二人の間にどのような出来事があったのかが知りたい。そのためにはマヤを刺激せずに、優しく同調しながら訊き出すのが最善の策だ。
そう考え、マヤの主張する “執務のお礼” とやらに対して優しい声を出して、同意を示していたところへ。
「ハンジさん。マヤは “お礼” だとか言ってますけど、デートだと思いますよ、私は」
ペトラがはっきりと、デートだと言いきった。