第24章 恋バナ
「君たち、ひどいな」
かけられた湯が目に入り、しょぼしょぼさせながらハンジがぼやく。
「ハンジさん、眼鏡かけてないから無防備だよね」
ナナバが白い歯を出して笑った。
「だから風呂は嫌なんだよ。よく見えないしさぁ!」
髪を洗い終え、身体をもこもこの泡で包んでいるマヤが言う。
「眼鏡をかけて入っても、曇っちゃって見えないですしね」
「そうなんだよ! かけてもかけなくても風呂では見えないんだ」
なんでも手早いペトラは、もう髪も身体も洗い終わった。最後のすすぎをしながらハンジに訊く。
「ハンジさんって、どのくらい目が悪いんですか?」
「そうだな~。眼鏡を外すと、エルヴィンとミケの見分けがつかない程度かな?」
「「「え!」」」
その場に居合わせた全員… ナナバ、ニファ、ペトラ、そしてマヤは絶句した。
「そんなことってある?」
「団長とミケさんってどっちも背が高いけど…。でもミケさんの方が高いし、横幅だって全然違うよね?」
ナナバとニファが、あまりの視力の悪さに驚いている。
「何をしたら、そこまで目が悪くなるんだろうね?」
「ハンジさんのことだから、巨人の文献でも読み漁ったんじゃないかなぁ?」
ペトラとマヤは、視力低下の原因を推測し始めた。
「そこまで驚くことでもないと思うがね」
ナナバとニファの二人にすっかり綺麗に洗ってもらったハンジは、風呂椅子から立ち上がって湯船に向かいながら分析する。
「ゾエ家の人間は代々、視力があまり良くないんだ。その遺伝的要素と…」
ざっばーんと湯船に飛びこむようして、ハンジは体を沈めた。
「マヤの言ったとおり、少々巨人の本を読みすぎた可能性は否定できない」