第24章 恋バナ
大声の主はハンジ。
「マヤ、ペトラ、いらっしゃ~い!」
何やら上機嫌の様子で体中を泡だらけにして風呂椅子に座っている。その両脇に同じく泡だらけでいるのは、ナナバとニファだ。よく見れば、二人は左右からハンジの身体をゴシゴシと洗っている。
「お疲れ様です。ハンジさん、ナナバさん、ニファさん」
マヤは律儀に全員の名前を呼んで挨拶をした。そして空いている場所に腰をかける。
ペトラも風呂椅子に座って石けんを泡立てながら、三人に話しかける。
「ハンジさんが大浴場にいるの、めずらしくないですか? っていうか三人が一緒にお風呂に入ってるの初めて見ました。明日は雨かも!」
「そうなんだよ、聞いてくれペトラ。これには深い訳があって…」
ナナバがハンジの背中をゴシゴシとこすりながら話し始めた。
「ハンジさん、一週間も風呂に入ってなくてさ」
「「え!」」
ペトラとマヤは同時に反応する。
「ありえないだろ? それでモブリットさんの特命を受けて、ニファと二人で洗浄中なんだ」
「そそ、さっき頭が終わったとこ。もう… すごく面倒!」
とニファも、ハンジの腰のあたりをゴシゴシとこすりながら文句を言う。
「……大変そうですね…」
マヤは苦笑いをしながら、髪を洗い始めた。
ペトラも泡立てた石けんで頭を泡だらけにしながら同調する。
「お風呂嫌いの上司を持つと苦労しますね!」
「そうなんだよ」「ほんと嫌になるよね」
ナナバとニファに不平不満を言われながら黙って洗われていたハンジが反論した。
「君たち、無理する必要はないんだよ? 私は別にこんな丁寧に洗ってもらわなくても全くかまわないんだから」
「こうやって私らが洗わないとハンジさん、お湯だけかぶって終わるでしょ。ニファ、流すよ」
ナナバはそう叫ぶと湯おけに湯をため、ざばーんとハンジにかけた。
「熱ぃ! ちょっとナナバ、優しくしてよ」
「文句言わない」
冷たくあしらうナナバ。
「ハンジさん、かけますよ!」
今度はニファが少々乱暴に湯をかけ、泡を綺麗に洗い流した。