第24章 恋バナ
「やっぱり帰ってたね!」
扉の向こうには、ペトラの明るい笑顔。
「うん、さっき帰ってきたとこ」
「お風呂に行こうとしたんだけど…」
ひょいと手に持っている入浴セットを持ち上げる。
「帰ってるんだったら土産話を聞きがてら一緒にと思って。どう、行ける?」
「もちろん。ちょっと待ってて、準備するから」
「OK!」
手早く用意をして部屋を出る。鍵をかけながら。
「ちゃんとお土産買ってきたよ」
「ありがと! 帰りにもらうわ」
「了解。甘いものって言ってたしバウムクーヘンを買ったよ」
「やった!」
「でね、知ってる? 広場のところにある立ち飲みバル… 名前はね “ペネロペ”。昼間はカフェをやってる…」
「あぁ、わかるわかる。ランチしたことあるよ」
「そこでね、買ったんだけど。“ヘルネ名物 バウムクーヘン” って書かれた幟(のぼり)が出ていて…」
「ヘルネ名物? バウムクーヘンが? 聞いたことないね」
「やっぱり? それでね…」
大浴場に向かいながら、バウムクーヘンの話で盛り上がる。
リヴァイ兵長はフィナンシェがヘルネ名物だと書かれた幟を見たことがあるらしいとか、バウムクーヘンは結構大きくて山積みで売っていたなどを話しているうちに大浴場に到着した。
脱衣所で衣類を脱ぎながら、ペトラが話を締めくくった。
「まぁ美味しければなんでもいいよね。部屋に帰ったら、一緒に食べよ?」
「ありがとう。実はちょっと期待してた。一緒に食べられるかなって」
「そんなの当たり前じゃん。マヤと一緒に食べるから美味しいんだってば!」
嬉しいことを言ってくれるペトラ。
裸になった二人は仲良くならんで大浴場へ入っていく。扉を開けた途端に全身が高い湿度と温度に包まれる。それはいつものことなのだが、今はそれに、大きな声が付け足されていた。
「来た来た! 待ってたよ!」