第24章 恋バナ
「そう! 今いいことを言ったね、ナナバ。“慣れ” だよ、“慣れ”。もうみんなは、私が風呂に入っていない状態に慣れているんだ。だから風呂に入る必要なんかないんだ」
「……はぁ」
ハンジの熱弁に負けているナナバを、モブリットが鼓舞する。
「ナナバ! 分隊長の詭弁に振りまわされるな!」
「いいや、ナナバ。冷静になるんだ。“美人は三日で飽きるがブスは三日で慣れる” というじゃないか。そういうことだよ!」
どこをどう冷静になれば美人だとかブスだとかの定義と、今の入浴問題とが結びつくか、そこに居合わせたモブリット、ナナバ、ニファの三人にはちんぷんかんぷんだったが、ここで言い負かされる訳にはいかない。
………!
それまで黙っていたニファの脳裏に、ある人物のしかめ面が浮かんだ。
「兵長! そうだ兵長ですよ! ハンジさん、お風呂に入らないと兵長に何を言われるかわかりませんよ?」
「いいぞ、ニファ!」
ニファの目のつけどころに喜ぶモブリット。
「はぁ? 今、リヴァイなんか関係ないじゃん!」
「いいや、あります! ハンジさんが不潔にしたら兵長に私たちが睨まれます!」
叫ぶニファ。そしてナナバも。
「兵長に目をつけられたくない! ハンジさん、あきらめて風呂に入って! そうしたら兵長に怒られないで済む!」
ハンジを捕まえようと腕を伸ばして近寄ってくるナナバから、逃れるように窓際へ走るハンジ。
「潔癖チビは関係ないだろ! 大体私は、リヴァイが怒ろうが睨もうが痛くもかゆくも…、ん?」
窓の外を見て黙ってしまったハンジ。
「……分隊長、どうしました?」
「噂をすれば、潔癖チビだ」
「え?」
モブリット、ナナバ、ニファの三人も窓へ。
「兵長だ」「兵長だね」「兵長ですね」
三人はそれぞれにつぶやいたあと、顔を見合わせた。
「一緒にいるのって…」
「「「マヤ!?」」」
窓の下をちょうど、リヴァイとマヤが通り過ぎるところだった。