第24章 恋バナ
「だ~か~ら~! そんな無理やりに私を風呂に入れる必要なんかないんだってば。こういうのは本人の意思が尊重されるべきだ」
ハンジが言えば、モブリットも負けじと。
「一日や二日、風呂に入ってないだけならその “本人の意思” とやらを尊重しますよ? けど分隊長、一体何日風呂に入ってないかわかってます?」
「三日」
「は?」
「あぁ、間違えた。五日」
「ふざけるな」
温厚なモブリットの顔に、青すじがピキピキと立っているのを見て、ハンジは苦笑いをする。
「いやぁ…、確か… 七日… だった… かな?」
「「えぇぇぇぇっ! 一週間も!?」」
ハンジが一週間も入浴していないと聞いたナナバとニファは絶叫する。
「そうなんだ。分隊長は一週間風呂に入っていない。真冬ならまだしも今はもう初夏。ゆゆしき事態だ、わかるだろ? ナナバ、ニファ?」
「そりゃあね…、一週間はないわ」
とナナバがあきれた風に肩をすくめると、ニファもため息をつく。
「想像以上でしたね…」
「だろ? そこで君たちの出番だ。俺に代わって、分隊長を大浴場で思いきり洗ってきてくれ」
「了解です。分隊長が不潔だなんて我が第二分隊の恥だわ」
了承したナナバに、ハンジが猛抗議を始めた。
「ナナバ! よく考えろ。自身がいかに整合性のないことを言っているか!」
「なんですか、もう…」
「君は今、モブリットから “一週間入浴していない” と聞いたから私が不潔だ、風呂に入れなければと思っただけだ」
「……そのとおりですが?」
「“一週間入浴していない” と聞く前は別に、私が不潔だとか風呂に入れなければとは全く思っていなかった訳だろう? 現に何故この部屋に呼ばれたのかも、わかっていなかったじゃないか」
「……そう言われたら、そうですけど」
「今日だって一緒に訓練したね? 昼食も向かいの席に座って食べた。だが君は、特に私が悪臭を放っているとか、汚くて近くに寄りたくないとか感じてはいなかったんだろう?」
「まぁ… 少々ハンジさんが臭うのは、もはやデフォルト設定と言いますか…、慣れてるというか…」
ナナバの声が小さくなる。