第24章 恋バナ
少しだけ時間をさかのぼること数分。
「断固拒否する!」
「いい加減に観念してください、分隊長!」
ここはハンジ・ゾエの居室。何やらハンジ分隊長とその副長のモブリット・バーナーが言い争いをしている。
「いいか、モブリット! 人間、少々のことでは死なないようにできている!」
「何を血迷ってるんですか! 巨人に食われたら一瞬で死にます!」
ハンジはこぶしを振り回した。
「ここで巨人を持ち出すのは反則だ!」
「反則も何も今日こそは、覚悟してもらいますよ!」
「ふん! モブリット… 君は大事なことを忘れているね。君は… 男なんだよ?」
モブリットは、にやりと意味ありげに笑った。
「そんなことは百も承知、二百も合点」
なぜだか余裕しゃくしゃくのモブリットの態度を不気味に思うハンジ。
「……なんだい? 何か作戦でもあるのかい?」
「……そろそろかな?」
壁の時計に目をやるモブリット。
コンコン!
「来た!」
即座に扉をノックする音に反応したモブリットの顔が、ぱっと輝く。
「失礼しま~す!」
ナナバとニファが、ひょっこりと顔を出した。
「モブリットさん、ニファに呼ばれて応援要員? で来たけど…、合ってます? ええっと… お二人の邪魔では…」
ナナバはちらっとハンジの方を見ながら言いよどむ。
……夜の9時も過ぎて、ここはハンジさんの私室。
モブリットさんと二人でいるところにお邪魔しちゃっていいの?
軽い戸惑いを見せているナナバにモブリットは明るい声で歓迎した。
「合ってる合ってる。そう、“応援要員” として呼んだんだよ」
「ほら~、ナナバさん! 言ったでしょう?」
ニファがぷぅっと頬をふくらませた。
どうやらモブリットに頼まれて、ナナバをハンジの私室に “応援要員” として連れ出したのだが、ナナバには本当にそんな呼び出しを受けたのかと疑われていたらしい。