第24章 恋バナ
「はい、ペトラのこと… 大好きです」
マヤは右手に持っている紙袋を顔の高さまで掲げた。
「喜んでくれるかなぁ? バウムクーヘン…。結構大きかったから、一緒に食べたいなぁ…」
独り言のようにつぶやきながら紙袋を覗いて、はっと顔を上げてリヴァイの方を振り向く。
「ティーカップ、兵長にいただいたってペトラに言ってもいいですか?」
「かまわねぇが」
「良かったぁ。ペトラとはよく一緒にお茶するんですよ」
嬉しそうに笑みを浮かべると、またふわふわと歩き始めた。
もう兵舎の正門まで来ている。
「……本当の本当に帰ってきちゃいました」
名残惜しそうにしているマヤは、敷地内に入りながら正面にそびえる幹部棟を見上げた。
二階の窓は一部屋も明かりが灯っていない。
以前にリヴァイ班と飲みに行ったときは、一部屋だけ… リヴァイ兵長の執務室の窓だけ明るかった。
「今日は、真っ暗!」
「……あ?」
急に大きな声で意味のわからないことを言うマヤに、リヴァイは怪訝そうだ。
「えっと… リヴァイ班と飲みに行ったときは、二階は兵長の執務室の窓だけ明かりがついていたでしょう?」
「……あぁ、そうだったな」
……それを見たマヤにエルドが、俺が夜も調整日も仕事をしていると教えたから、執務の手伝いを思いついたんだったよな…。
「でも今日は、二階は真っ暗!」
「そうだな」
見上げればマヤの言うとおり執務室の階である二階は真っ暗。三階はちらほらと明るい。
……エルヴィンも今日は早めに切り上げたか。
リヴァイと同じくらいに時間外でも執務をしていることが多いエルヴィン団長も、今夜は休んでいるようだ。
「……行くぞ」
「はぁい」
二人は敷地内を進み、マヤの居室がある一般棟へ向かった。