第24章 恋バナ
悪戯っぽい笑顔を浮かべてリヴァイの顔を覗きこんだマヤは。
「私… マヤ・ウィンディッシュは、リヴァイ兵長の忠実な部下でありまぁす。すべて仰せのままに!」
……酔ってんのかよ。
「はぁ…」
今の状態のマヤに何を言っても仕方がないと観念し、リヴァイは盛大にため息をついた。
「……夜風が… 気持ちいい…」
そんなリヴァイの心情などおかまいなしに、マヤはふわふわと歩き出している。
「おい、気をつけろ」
あとを追うリヴァイの視界には、きらめく白銀の光。
マヤの後頭部の髪飾りが月の光を反射して、歩くたびに輝いている。
その髪飾りの名称などはリヴァイにはわからなかったが、白銀色の珠が美しく配列されていて、月光をきらきらと反射して。
夜に溶けこんだ鳶色のマヤの髪の上で特別な輝きを見せる。
綺麗だと心が叫ぶ。
「……光ってる」
つい言葉になって、あふれてしまう。
くるりと振り返り、マヤが笑う。
「何がですか? あぁ、お月様?」
夜空を見上げても笑う。
「満月じゃないけど、綺麗ですね」
少し酔って、ふわふわと歩いて、すぐに笑うマヤが愛おしい。
湧き上がる慕情のままに、いつもなら言わないような言葉をつぶやいてみる。
「……髪が綺麗だ。髪飾りが光って」
「あぁ、これですか?」
くるりくるりと二度まわって、夜道にきらきらと輝きがこぼれ落ちた。
「ペトラが結ってくれたんです。ヘアコームも選んでくれて」
「そうか。……ペトラと仲がいいんだな」
ペトラとマヤの仲が良いことなどわかりきってはいるが、リヴァイはそうとしか言えなかった。
本当は “髪型もヘアコームとかいう髪飾りも、とても似合っている” と伝えたかったのだが。