第23章 17歳
「謝る必要なんかねぇだろ。俺だってお前の誕生日を知らなかったんだ」
低い声は優しくて。すっと気持ちの隙間に入ってくる。
「それにもう今は、互いに知ってるんだからいいじゃねぇか」
「そうですね」
しゅんとなった気分も、リヴァイ兵長の言葉ひとつで浮上する。気持ちが上がると、急に目の前に置かれているプレゼントの中身が気になってくる。
「……これ、開けてもいいですか?」
「あぁ」
若い草木の芽が萌えるような、明るい緑の包装紙にきちんと包まれている四角い箱。純白のリボンで愛らしく結ばれている。
しゅるるとリボンをほどき、丁寧に包装紙をはがしていく。
現れたのは厚手の紙箱。
……何かしら?
どきどきと胸を高鳴らせて、そっとふたを開ける。
「……あっ…」
それは桔梗のティーカップ。
“カサブランカ” で心を奪われた、あのティーカップ。上品な白磁に描かれた、青紫色の桔梗の花が美しい。
「兵長… これ…。キキョウの…」
感激のあまり、目頭が熱くなる。
「私、今度リックさんのお店に行ったら、また絶対このティーカップにしようと思ってたんです」
「……だろうな」
「でも… そうしたら永遠に他のティーカップで紅茶を飲めないなぁなんて思ったり。こうやってプレゼントしてもらったら、いつでもキキョウのティーカップで飲める。リックさんのお店では色々なカップを楽しめる。もう…、最高です!」
リヴァイを見つめる瞳は、涙がにじんでうるうるしている。
「本当に… ありがとうございます。大切にします」
「あぁ」
愛おしそうに桔梗のティーカップを手にしているマヤを見てリヴァイは、急だったがこれを贈って本当に良かったと思った。