第23章 17歳
「……よくご存知でしたね? 私の誕生日…」
「あぁ、それは…」
ミケに教えてもらったと素直に答えかけたが、なぜか腹の底から急速に、もやもやとした気持ちが湧き上がってくる。
俺はマヤの誕生日を知らなかった。
正直にいえば、マヤのことは気にかかって仕方がなかったのに、いつの間にか愛おしい存在になっていたのに、そのマヤの誕生日がいつなのか… などという発想が全くなかった。
それなのにミケの野郎は知っていた。
直属の上司だから、当たり前なのかもしれねぇ。
いや待てよ、俺はリヴァイ班のあいつらの誕生日を知っているか?
確かエルドは1月末に皆が祝っていたな…。グンタはもうすぐだったか…。オルオとペトラはこの春からリヴァイ班に入れたし、全然知らねぇ。
というか巨人と戦うのに、それぞれの誕生日なんて関係ねぇしな。
無理やりにも心の中で自身を正当化するが、それでも “ミケはマヤの誕生日を知っていた” という事実がリヴァイの気持ちを落ち着かなくさせる。
癪にもさわるし、言いたくねぇが。
マヤに嘘はつきたくねぇ。
「ミケが教えてくれた」
「あぁ!」
マヤは合点がいった顔をする。
「分隊長ってものすごく皆さんの年齢に詳しいですよね」
「………?」
怪訝な顔をするリヴァイに、マヤは微笑んだ。
「前に年齢の話になったことがあって。団長や兵長、ハンジさんの年齢を知ってました。兵長は27歳なんですよね?」
「そうだ」
「じゃあ私、今日で17になったから10歳差ですね」
「……だな」
マヤは少し間をあけてから、思い切った様子で訊いた。
「あの…、兵長のお誕生日はいつなんですか?」
「12月25日」
「12月25日ですか…。すみません、私… 分隊長みたいに詳しくなくて…」
申し訳なさそうにするマヤ。
……兵長のお誕生日は12月25日なんだ…。
もうとっくにリヴァイ兵長のことを、特別な人、かけがえのない存在だと自身の想いを自覚しているのに。
私…、兵長のお誕生日がいつだなんて考えたこともなかった。
……恥ずかしい。
恋する相手の生まれた日を意識したことがないなんて。
女子として…、ううん、人として失格なのでは…。