第23章 17歳
「団長も…」
マヤは店内をぐるりと見渡す。
テーブル席についているのは自分たちだけであり、他の客は先ほど店主にお代わりを要求した初老の男性と、カウンターの端の席でひとり静かに飲んでいる中年の男性だけだ。
落ち着いた大人の雰囲気が漂っている。
「あっ、メニュー」
店内を見渡したついでに、マヤは壁にかけられている黒板に気がついた。
白いチョークでつらつらと、様々な料理の名前が書かれていた。
「何がおすすめなんですか?」
軽い気持ちで訊いたのに、予想外にリヴァイが困った顔をしている。
「わからねぇ」
「……よく来るお店なんですよね?」
「いつもは酒を飲んで、あとは適当に出されたつまみを食うだけだからな…」
「そうですか…」
ならば何を注文すればいいのかわからないと、少々がっかりしたマヤであったが、すぐに解決の糸口を見つけた。
「リヴァイ班のみんなを連れてきたときは、何をたのんだんですか?」
「あのときは…」
リヴァイは思い出しているかのように、軽く眉根を寄せた。
「美味いものを食わせてやってくれと店主に任せた」
「じゃあ私もそうしてください。あっでも、ひとつだけ注文してもいいですか?」
「なんだ?」
「えっと…」
再び黒板を見て、読み上げる。
「鶏むね肉と夏野菜のシーザーサラダ」
「了解」
「今月のおすすめって書いてあるし、美味しそうです」
「そうか。……酒はどうする?」
「エールで」
「わかった」
リヴァイは店主を呼ぶと自身が飲むウイスキー・ソーダとエール、鶏むね肉と夏野菜のシーザーサラダとあとは何か適当に美味いものをと注文した。
「お任せください!」
またリヴァイ兵長が気前よくお任せ注文をしてくれたと、上機嫌で店主は厨房に消えた。