第23章 17歳
店内に足を踏み入れた二人に、厨房から出てきた店主が声をかける。
「リヴァイ兵長、いらっしゃいませ。お好きな席へどうぞ」
店主が出てきた厨房へと通じるスイングドアのそばには、七人ほどが座れそうなL字型のカウンター。そして壁に沿って四人がけのテーブル席が三つ。
リヴァイは黙って、テーブル席へ。マヤもあとをついていき、向かいの席に座る。四人がけの席なので、二人はそれぞれ自分の隣の空いている椅子に荷物を置いた。
白い前掛けで手を拭きながら、店主がにこやかに近づいてくる。
「部下の方で…?」
マヤの方をちらりと見てから遠慮がちに訊いてくる。
「あぁ」
店主は頭の中で慌ただしく計算した。
……この間連れてきた部下の方たちは複数だったが、今日はお一人。それも女の子。
ただの部下ではないとか?
これは下手なことを言って、機嫌を損ねては大変だな。
無難にいかなければ。
「そうですか! これはまた可愛らしい部下ですな!」
じろりと冷たい視線で射抜かれた店主は、失敗したと肩を落とした。
無難にいったつもりが三白眼に睨まれて、とんだ災難だ。
「え~、ご注文は?」
リヴァイがマヤを見ると、メニューも何もないので戸惑っている。
「決まったら呼ぶ」
「かしこまりました」
と店主が頭を下げるのと同時に、カウンター席から声が飛ぶ。
「親父、お代わり!」
「はいはい、ただいま!」
あたふたと戻る店主を眺めながら、リヴァイはぽつりとつぶやいた。
「ああ見えて、いざ飲み始めると一切余計なことは言ってこないんだ」
「そうなんですね。ミケ分隊長もよく来られるんですよね?」
ミケと聞いて、リヴァイの眉がぴくりと動く。
「……そうだな、エルヴィンも。ゆっくり飲むならこの店が多いな」