第23章 17歳
ぺこんと頭を下げたあと、マヤはにっこりと笑った。
「また兵長に “執務のお礼” をしてもらえるように、明日から頑張りますね」
「……期待している」
「はい!」
それでは帰りましょうかと言わんばかりに、マヤが兵舎へとつづく道の方へ向かおうとしたら。
「おい、どこへ行く」
……どこへ行くも何も、帰るんですけど?
と思いながらも、真面目に答えるマヤ。
「……兵舎ですが」
「まだ帰る気はねぇが」
「え?」
「メシを食って帰ろう」
「え?」
「……え?じゃねぇよ」
リヴァイの機嫌がどことなく悪そうで、マヤはうろたえる。
「すみません! 帰るのかと思って…。でもお礼なら充分にしていただきましたし、別に… その… 大丈夫です…」
マヤとしては遠慮したつもりなのだが、ますますリヴァイの声が尖っていく。
「一緒にいるときはちゃんと食事をとれ、一緒に食べろと言ったのはお前だろうが」
「……そうでした…」
「それにミケにも、何か美味ぇものをおごってもらえと言われていただろ」
自分で “ミケ” と名前を出しておきながら、機嫌が悪い様子のリヴァイ。
「あっ はい。でもそれはもう、リックさんのお店でごちそうになりましたし…」
気を遣えば遣うほど、リヴァイの眉間の皺は深くなる。
ここは素直にごちそうになった方がいいんだと、マヤは悟った。
「でも… そうですね、おなかが空きました。どこに連れていってくださるんですか?」
途端にリヴァイの表情がやわらかくなった。
「そうだな…。何が食いてぇ?」
「えっと…」
ヘルネの街には調査兵団御用達の居酒屋 “月夜亭” 以外にも、いくつかの店がある。
カフェには何軒か行ったことはあるが、夜の食事には “月夜亭” にしか行ったことがない。
……せっかくだから行ったことのないお店に…。
そう考えたときに、マヤは急に思い出した。