第23章 17歳
もうすぐ街の広場が見えてくる。
……今度こそ、帰るんだよね?
丘にのぼる前は、まだ兵舎に帰りたくない… 一緒にいたいという気持ちがふくらんだ。
だが今は、満たされている。
丘にのぼって誰にも話したことのない自身の根幹…、自分が自分であるための… 根っこのところにある大切なエピソードを、包み隠さずにリヴァイ兵長に話すことができた。
……今日、兵長と一緒にいられて幸せだったわ。
すっかり満足しているマヤは歩きながらも、ほんわかとした心の笑顔が表に出てしまっている。
ちらちらとマヤの様子は常に気を配りながら歩いていたリヴァイは、すぐにマヤが幸福そうな笑顔を浮かべていることに気がついた。
ちょうど広場に到着したことをきっかけに声をかける。
「何を笑っている?」
訊かれて初めて、自分がひとりでに笑みを浮かべていたことを知るマヤ。
「あっ、私… 笑ってました?」
「あぁ」
兵舎に帰ってから伝えようと考えていたが、今そのタイミングなのではないか…とマヤは直感的に思った。
「あの…! 笑っていたのは今日すごく… 幸せだったからです。リックさんのお店は最高だったし、思いがけず丘にも行けて。私が胸の奥に大切にしまっていた思い出も話せたし…。一緒に眺めた景色は綺麗で…。それにこうやって、ただ一緒にならんで歩いただけでも嬉しくて幸せな気持ちで胸がいっぱいになって…」
あふれてくる想いをそのまま言葉にしていたマヤだったが、ふと気づく。
……やだ、告白みたいになってる!
このままだと “好きです” と口走ってしまいそうだ。
慌てて軌道修正をする。
「……本当に誘っていただいて良かったです。ありがとうございました」