第23章 17歳
茜色の空を映したように紅く、互いに見初めて。
見つめ合うほどに胸が苦しくなる。
それから逃れるようにリヴァイは。
「マヤ、なぜズボンをはいてこねぇ」
不機嫌そうな… いや少し、すねたような声を出す。
「え?」
……なんで急にズボン?
マヤは意味がわからずに軽く眉間に皺が寄った。
「一緒に登るって言っただろうが」
またどこか… すねた子供のような声の色。
「あ…」
マヤはやっと意味がわかって樫の木を見上げた。
「ここに…、この丘に来るとは思ってなかったので…」
……爺さんの店に行くって兵長は言っていたから。
だから爺さん…、リックさんのお店だけに行くのかと。
そして少しでも綺麗なように、可愛く見えるように、良い印象を持ってもらえるように…。おしゃれして、でも気合いを入れすぎているとは思われたくなくて。
悩みに悩んで決めた服装。
……スカートじゃなくて、ズボンにすれば良かったんだ…。
失敗したと落ちこむマヤの様子を見て声をかけたリヴァイの声は甘い。
「またここに来る理由ができたな…」
「また… ここに? 一緒に…?」
「あぁ。お前が忘れずにズボンをはいてくるまで、何度でも」
青灰色の瞳に、からかうような色が浮かんでいるのを見つけてマヤは笑った。
「ふふ、何度でもって! ちゃんと次はズボンをはきますから」
「あぁ、そうしてくれ」
「はぁい」
なごやかに笑い合いながら、互いに胸の内では嬉しくて仕方がなかった。
また一緒に、この丘に来ることができる。
理由はなんだっていい。
いつでもここに戻ってきて、一緒に景色を。
口には出さなくても、きっと同じ想いを胸に。
「……街に戻るか」
「はい」
夕陽に背を向けてもなぜか頬の染まっているリヴァイとマヤは、仲良くならんで丘を下りていった。