第23章 17歳
さらさらと指にかかるリヴァイの前髪。
「……すごく綺麗です…」
のぼせたような熱が頬を支配していくのを感じながら、マヤがささやくと。
「………!」
ふいに手首をリヴァイに掴まれた。その痛みで自身がなかば無意識のうちに、リヴァイ兵長の髪にふれたことに気づく。
「ごめんなさい! 私、つい…」
すぐに無礼を謝るが、その先の展開はマヤの予想とは違っていた。
謝ったあとは、すぐに手首を放してもらえるものかと。
掴まれている手首が熱い。
いきなり髪にさわったりしたから怒らせた…?
マヤは恐る恐るリヴァイの表情を確かめようと覗きこむ。
そこにはマヤ自身ののぼせた熱が伝染したかのように。
リヴァイの白い頬が茜色に染まっていた。
「……兵長…?」
リヴァイは何も答えない。
ただマヤの白く細い手首を掴んだまま立っている。頬は熱を持っているように見えるが、眉間には皺が寄り、青灰色の瞳はどこか苦しそうだ。
「あの、放してください…」
まだ手首を掴まれてからそんなに時は経っていないのに、マヤには長く、長く、まるで何時間もそうしているかのように感じられた。
マヤが俺の髪を綺麗だと、その涼やかな声でささやいたかと思うと、すっと白い手がまっすぐ伸びてくる。
なんの迷いもなくその細くて優美な指先が前髪にふれた。
「………!」
その瞬間、熱がすべてを支配した。
さらさらと俺の髪がマヤの指の間からこぼれ落ちる。
のぼせた頬、のぼせた身体、耳すら熱を持って。そしてその耳に流れこんでくるマヤの言葉。
「……すごく綺麗です…」
気づけば手首を掴んでいた。
マヤにふれるためではない。ふれないために。
手首を掴んでマヤを髪から遠ざけないと。
そうしなければ身体を暴走する熱のままに、抱き寄せていただろう。