第23章 17歳
「……そうですよね。そう信じます…」
マヤがリヴァイの言葉に自身の想いを重ねたときに、上空から美しい鳶の鳴き声が聞こえてきた。
「ピー ヒョロロロロ…」
二人は思わず空を見上げる。
樫の木の枝で羽を休めていた鳶が、いつの間にか再び大空に飛び立ち、悠然と弧を描いていた。
「ピー ヒョロロロロ…、ピィゥーピー!」
「またね~!」
マヤが鳶に向かって大きく手を振ると、まるでそれを待っていたかのように鳶はもう一度ピー!と鳴き、陽の傾きかけた橙色の空の彼方へ飛び去った。
「……本当に会話しているみてぇだな」
「ふふ」
マヤは嬉しそうに笑ってから、あっと気づいた。
「私… もともとの話から脱線しすぎましたね」
「そう言われたらそうだな。野鳥の鳶とどうやって心を通わせているのか… だな?」
「はい。お礼を言おうと毎日丘にのぼるうちに、少しずつ鳶との距離が近くなっていったんです。お兄ちゃんには会えなかったけど、鳶はいつも飛んでいたから。ずっとずっと話しかけて。樫の木の枝に止まりにくるようになって。そうやってクロルバの鳶と最初に仲良くなったんです」
マヤは鳶が消えた遠くの空を見つめながら、話をつづけた。
「それからは鳶だけではなく、鳥や動物を見かけたら声をかけるようにして…。もちろんすべての子たちと仲良くなれる訳ではないですけど…。でもね、この髪の色のおかげか」
自分の髪を一束手に取って、悪戯っぽい笑顔を見せた。
「鳶とは相性がいいみたいです。ヘルネの子たちとも、すぐに打ち解けられました」
「そうか。鳶もお前の頭の色で仲間と思っているのかもな」
「はい。マリウスにいじめられていたときは、自分の髪の色が嫌だったけど、今は結構気に入ってます!」
……俺も、お前の髪が好きだ… なんて言えねぇが。
と、リヴァイが密かに想っていると。
「金髪も素敵だし、兵長みたいな黒い髪も綺麗ですよね」
「……そうか?」
「ええ、すごく綺麗…」
マヤは夕陽を受けて美しい艶を放っているリヴァイの漆黒の髪に、思わず手を伸ばした。