第23章 17歳
「……クロルバのやつじゃなかったのか?」
「わかりません。名前もわからないし…。憶えているのは金色に輝いていた髪と…」
マヤはそこで言葉を止めて、意味ありげにリヴァイの顔を見た。
「……背中の自由の翼だけです」
「おい、そいつは…」
リヴァイは目を丸くした。
「はい。その人は調査兵団の兵士です」
「そうか…」
「私はその人に出会ってから、大げさかもしれないけど… 人生が変わったと思います。マリウスと…、マリウスが亡くなるまでずっと一緒にいるような友達になりましたし、自由について考えるようになりました。それは年を追うごとに、考える自由も色々な意味を持っていきました」
マヤはあらためてリヴァイの瞳をまっすぐに見つめた。
「兵長…。私が調査兵団に入団したのは、丘の上で風に揺れていた自由の翼が忘れられなかったからです…。でもそれは決してその人に会いたいからだけではなく…、自由のためで…」
マヤはリヴァイから視線を外して、ヘルネの街並みを淋しそうに眺めた。
「だってもうきっと、その人は…」
鼻の奥がツンとして、じわりと景色がゆがむ。
「でもその人がいなくたって、自由の翼は私たちの背中にあるもの。自由のために戦いたい…」
「マヤ、俺は信じている。仲間の想いは受け継がれていく。お前が出会ったそいつの想いも、間違いなく俺たちの中に流れている」
マヤは返事をしたいのに、できずにいる。
……今…、声を出したら… きっと涙声だもの。
「もう泣くな。丘で出会ったやつも “笑え” と言っていたんだろう?」
「……そうですね。笑う練習をしたんですよ?」
マヤは泣き笑いの表情で。
「いーーーーーって。どうですか? 私、笑えてますか?」
「あぁ。上手く笑えている」
「いーーーーー…」
涙を止めたマヤはささやいた。
「……お礼を言いたかったな…。そして、調査兵になったよって…。あなたのおかげでここにいますって伝えたかった…」
リヴァイの低い声がマヤを包んだ。
「きっとどこかで見ているさ。自由の翼を通じて、想いはつながっているのだから…」