第23章 17歳
「……自由…」
ぽつりと心の隙間からこぼれ落ちるかのように、マヤがつぶやくと。
「そう、自由だ。君は君であり、自由なんだよ。あの鳶が自由に空を飛ぶようにね。そして君をからかった子も、もちろん自由だ。ひとりひとりが、かけがえのない自由な存在であるからこそ尊いんだよ。そしてそれは、君が君のままでいるからこその自由なんだ。わかるかい?」
「うん…」
「人はね、どうしたって自分と他人とを比べてしまうものなんだ。君もさっき、金色の髪をうらやましがっていただろう? そして自分の髪の色に失望していた。でもそれは違う。すべてがそれぞれ自由に輝いているんだ。そしてその自由は、もっともこの世の中で大切なもののひとつなんだ。だから君は君のままで美しいんだよ」
諭す男の表情と声は、どこまでも優しさにあふれている。
「ありがとう…」
今の自分のままでいいんだ、自由なんだよと教えられ、マヤは心がふわふわと軽くなるのを感じた。
大丈夫、大丈夫、もう大丈夫。
次にマリウスたちに会ったときも、きっと大丈夫… のはず。
本当に大丈夫なのかしら…。
マヤがほんの少し、そう思ったときに。
「ところでその金色の髪の子は、男の子なのかい?」
なぜそんなことを訊くのかと思いつつ、こくこくとうなずくマヤ。
「ならば君に、策を授けよう」
「サク…?」
「あぁ。私はちょっとした策士なんでね…」
「………? サクシ…?」
どうやら言葉の意味がわかっていないらしいマヤの様子を見た男は、にっこりと笑って言い換えた。
「魔法の言葉を教えてあげるってことさ」