第23章 17歳
「……あのね、学校の友達がブスだって言うの…」
それを聞くと、男は目を丸くした。
「君のことを?」
「うん…。枯葉みたいな色の髪でブスだって言って、髪を引っ張るの」
「それは痛いし、嫌だね?」
「そうなの。やめてって言ってもやめてくれないし、この丘の悪口も言うの…」
マヤはマリウスたちにされたことを言葉にすると、また悲しくなってきた。
鼻がツンとしてくる。目の奥の方に何か熱いものが、じわりと生まれそうになってくる。
「君は全くもってブスではない」
「でも…」
マヤは自身の髪を見つめた。
「私の髪は地味な枯葉色で…、その子の髪は綺麗な金色で輝いてるの…」
マヤはそう言いながら、男を見上げた。
「お兄ちゃんの髪も金色ね…」
「そうだね」
「……いいなぁ…。私も金色だったら良かったのに…」
マヤは再び、うつむいてしまった。
「空を見てごらん」
急にそう言われて、マヤは反射的に顔を上げる。
「鳶が飛んでいるだろう?」
「とび?」
「あぁ。あの鳥は鳶というんだ」
大空には一羽の鳶が、悠然と羽を広げて舞っている。
「自由に空を飛んでいるあの鳶を、君はどう思う?」
マヤはじっと弧を描く鳶を見つめる。
「すごく綺麗…」
「そうだね、すごく綺麗だ。お嬢ちゃんも綺麗なんだよ」
「………?」
男は空を舞う鳶から、マヤの長い髪に目をやる。
「この髪は鳶色だ。あの鳶と同じなんだよ」
「……鳶と同じ…」
「そうだ。君の髪は美しい。そして…」
男は視線をマヤの髪から、琥珀色の瞳へ。
「お嬢ちゃん、君は自由なんだ。あの鳶のように」