第23章 17歳
「兵長、聞いてくれますか? 少し長くなるかもしれないけど。うまく話せないかもしれないけど…」
「あぁ、存分に話せ」
リヴァイの瞳に秘められた何もかもを受け止める優しさを見つけたマヤは、今まで誰にも… 親にも友達にも言ったことのない幼き日の出来事を話し始めた。
「学校に入ってすぐの年だったから、私もマリウスも6歳だったと思います…」
「おい、いたぞ!」
学校の帰り道、背後から聞こえてくる大きな声。
道端に咲いているコスモスの花を見ていたマヤは、びくっとして振り返った。
「……マリウス」
立っていたのはマリウスと三人の男の子たち… オーラフ、アレハンドロ、カーター。
クロルバ区を仕切っているディーン商会の息子のマリウスは学校に入るとすぐに、お山の大将になって三人を子分のようにどこに行くのにも従えていた。
「マヤ、何してんだよ?」
「お花を見てたの。綺麗でしょう?」
「フン、花なんかどうでもいいだろ。それよりオレたちと遊ぼうぜ!」
「今日はお店のお手伝いをするから早く帰らないと駄目なの。ごめんね」
そう言って立ち去ろうとするマヤの長い髪を、マリウスは思わず掴んで引っ張った。
「痛い! 放して!」
「何がお店のお手伝いだ! オレが遊ぼうって言ってるんだから、お前は遊ぶんだよ!」
ぐいぐいと髪を引っ張るマリウス。痛いからやめてと叫ぶマヤ。
「マリウス、やめなよ。マヤの綺麗な髪の毛が抜けちゃったらどうすんだよ」
見兼ねて止めに入ったアレハンドロは、マリウスの腕を掴んでマヤから引き離した。
そして。
「マヤ、大丈夫?」
優しい仕草でマヤの頭を撫でた。
「うん、ありがとう」
マヤがアレハンドロに笑顔を向けた瞬間に、マリウスは激高した。
「マヤの髪なんて全然綺麗なんかじゃねぇじゃん!」