第23章 17歳
……マリウスがマヤをいじめる?
リヴァイは意味がわからないと混乱する。
確かペトラは言っていた。
“マリウスはマヤの顔を見るたびに好きだ好きだって言ってましたけど”
壁外調査の前夜の図書室でザックも。
“もっと前に…、訓練兵のときからつきあいたかったんだ。ぼ、僕だけでなく、他のヤツらも。でもマリウスの牽制がすごくて…”
マヤのことを守ると言ってはばからなかったマリウス。
……そのマリウスがマヤをいじめていただと?
「マリウスは… お前を守ると言っていたはずだが…?」
「ええ、そうです。でもそれは… 昔のことがあったから… だと私は思っていました。でも違った…」
マヤの声の最後の方は小さくなる。
……そう… 私はずっとマリウスが、想ってくれていたことを気づけずにいた。
好きだ、守ると言ってくれるのは… 幼きころの罪滅ぼしなのかと…。
知ったときには、もうマリウスはこの世にいなくて。
………。
悲しいのか辛いのか、淋しいのか悔いているのか。もう決して取り返しのつかない状況を受け入れていくしかない感情の波に翻弄される。
だが、うつむいてしまったマヤの脳裏に浮かんだのはマリウスの手紙の最後に書かれてあった一文。
“……お前を一生守ってくれる… オレより強いやつと幸せになれよ…”
マリウス、気づいてなくて… ごめんなさい。長い間、大切に想ってくれていて… ありがとう。
私、リヴァイ兵長が好きなの。
……だから、すべてを話すつもり。
うつむいてしまっていたマヤだったが顔を上げた。
そのときにはもう、何もかもを受け入れて前に進もうとする力強さを瞳に秘めていた。