第23章 17歳
「そうですよね、こげ茶色。茶色…、濃い茶色。土の色。枯葉の色…」
一瞬マヤは淋しそうな色を瞳に浮かべた。
「色々な呼び方があると思うんですけど、ある人が教えてくれたんです。私の髪の色は鳶色(とびいろ)だって」
「鳶色…」
マヤの艶のある髪に目をやりながら、リヴァイはつぶやいた。
「私の生まれ育ったクロルバにも丘があるんです。同じように大きな樫の木が立っていて…」
マヤは背後の樫の木をちらりと見る。
そしてまた眼下に広がるヘルネの街並みを眺めながら。
「同じように空と家々と、そして遠くに壁がそびえていて…」
「………」
リヴァイは容易に想像できた。クロルバには行ったことはないが、きっとこの丘から見える景色と似ているのだろう。恐らくヘルネの方が発展しているだろうが。
「とても似ているんです、私の故郷にある丘と。もちろんクロルバよりヘルネの方がお店も家も多いけど…」
「そうか」
「はい。それで私… 幼かったころ、よく故郷の丘にのぼっていました」
景色を見ていたのか、それとも樫の木に登っていたのか… など内心で見当をつけていたリヴァイは、マヤの次の言葉に少なからず驚いた。
「丘に逃げては、ひとりで泣いていたんです」
「……なぜ?」
ゆっくりと街並みから隣に立つリヴァイの顔へ、マヤの顔が向けられた。数秒もの間、視線が絡む。
……マヤの瞳の奥で揺れているものはなんだ?
話し始めたからには言う覚悟はできているに違いないのに、まだ少し何かをためらっているようにリヴァイには見えた。
「マリウスとその友達何人かに、いじめられていたんです」
そう打ち明けたマヤの顔には、泣き笑いのような表情が浮かんでいた。