第23章 17歳
「そんな、まさか」
樫の木を見上げていたマヤは、リヴァイの方を向いた。
「動物が好きで話しかけたりしますけど、本当に会話をしている訳ではないですよ? ただ… なんとなく心は通じているかなぁ… なんて…。あっ、でもアルテミスとはちゃんと会話できていると思います!」
マヤの琥珀色の目が輝いている。
「兵長だってオリオンに話しかけるでしょう? オリオンとお話できてませんか?」
「あぁ… そうだな…。確かにオリオンに話しかければ… それ相応の反応が返ってくる」
リヴァイはオリオンのつぶらな瞳を思い出し、自然とやわらかな表情になった。
「そして互いに何を考えているか、手に取るようにわかる…」
「ふふ、やっぱり」
マヤは嬉しそうだ。
「アルテミスもオリオンも… そしてあの子だって、きっとこちらの言いたいことをわかってますよ」
再び、木の枝で羽を休めているだろう鳶の方を振り仰いだ。
「だが馬は、ともに命を懸けて戦っている相棒みてぇなもんだが…」
リヴァイも樫の木を見上げた。
「相手は野鳥だぞ…?」
「そうなんですけどね…」
マヤは樫の木から、視線を丘の下に広がるヘルネの街並みに向けた。
「兵長…。私の髪の色… 何色かわかります?」
「……は?」
唐突に放たれた、なんの脈絡もないマヤの質問にリヴァイは面食らう。
街並みを見下ろしていたマヤは、くるりとリヴァイの方を振り返った。背中の真ん中あたりまでまっすぐに伸びている美しい髪がさらさらと風に揺れる。
………。
以前からマヤの髪を綺麗だとは思っていたし、さわってみたいと望んでいたが。
今日はまた、ひときわ。
待ち合わせ場所のクヌギの木の下から、息を弾ませて駆け寄ってくるマヤを見つけたときから。
いつもと少し違う。
サイドの髪がまとめられていて、愛らしい顔の輪郭がよく見える。
陽光を浴びてきらきらと輝く髪がなびいて。
その色は…。
「こげ茶色… だろ?」