第23章 17歳
「……元気だった?」
いつものようにマヤは、上空で弧を描いて飛んでいる鳶に話しかける。
「ピー ヒョロロロロ…」
マヤと対話するかのように鳶は、美しい鳴き声を広い空に響かせる、悠然と羽を広げて。その羽は艶のある濃い茶色で、羽先の白いまだら模様が美しい。
「ふふ、元気そうね」
マヤが右手を鳶に向かって伸ばす。リヴァイが見たことのある光景だ。
「ピィゥー ピー ヒョロロロロ…」
やはりリヴァイが知っているように、鳶は伸ばされたマヤの右手を止まり木にしようとしているかのごとく舞い降りてくる。ゆっくりと弧を描きながら。ピーヒョロと美声を響かせながら。
マヤの手を目掛けて下りてきていた鳶はピッ!と鳴くと、その目的地を変更したらしい。ゆるやかに方向転換をして樫の木の上の方の枝に止まったのか、姿が見えなくなった。
「ふふ、兵長のこと憶えたかな?」
「………?」
怪訝な顔をするリヴァイに対してマヤは枝を見上げて笑う。
「前は飛び去ってしまったでしょう? でも今日は羽を休めたから。ちょっとここからは見えないですけど、この上にあの子はいる。警戒する相手がいたら空から下りてこないわ…」
そして唐突に枝の上に向かって大きな声を出した。
「ねぇ、そうでしょう?」
すると。
「ピィゥー ピッ!」
「ほら!」
樫の木の上の方の枝から聞こえてきた鳶の鳴き声は、まるでマヤと会話をしているようだ。
……まさか本当に…?
「おい」
リヴァイは素直に疑問を吐き出そうと思った。
「……前から気になっていたんだが、鳶と話せるのか? 動物が好きだとは言っていたが…」