第23章 17歳
街の中心の広場に向かって歩き出したリヴァイの後ろをついていきながら、マヤは頭の中で自問自答を繰り返していた。
……このあと、どうするのかな?
もともと執務のお礼だということだけど、今のリックさんのお店でごちそうになったから…。これで終わりよね?
兵舎に帰るのかな?
………。
帰りたくない。
まだ一緒にいたいな…。
どうすればいいんだろう。
そんなことを、ぐるぐると考えていたら広場に面している立ち飲みバルまでやってきた。18時まではカフェとして営業しているその店の入り口には、大きな幟(のぼり)がはたはたと音を立てていた。
行きがけには気づかなかったが、そこにはこう書かれている。
“ヘルネ名物 バウムクーヘン”
……あれ? バウムクーヘンってヘルネの名物だったの?
知らなかった。
というか…、あれ? 何か忘れているような…?
………。
思い出そうと努めるマヤ。足は完全に止まっている。
マヤがバウムクーヘンの幟の前で立ち止まったことに気づいたリヴァイが “おい、どうした?” と声をかけるのと、マヤが思い出したのは、ほぼ同時だった。
「ペトラ!」
「……は?」
「あっ、すみません」
思い出すことに夢中で、自身が立ち止まっていたことにも、リヴァイ兵長が心配そうに覗きこんでいたことにも全然気づいていなかったマヤは、申し訳なさそうに謝った。
「ペトラがどうかしたのか?」
「えっと… 何か甘いものをお土産に買ってきてとペトラから頼まれてまして…。今まですっかり忘れていたけど、これを見て思い出しました」
にっこりと笑ったマヤは、はためく幟を指さした。