第23章 17歳
しばらくは向かいに座ってじっと見つめてきているリヴァイのことも忘れて、スコーンに夢中になった。
ひとつめはクロテッドクリームだけで食べきった。皿にはもうひとつ、スコーンが狼の口をマヤに見せて手に取ってもらうのを待っている。
舌なめずりをしそうな勢いで、ふたつめのスコーンに手を伸ばしたマヤは、今度はあんずのジャムを塗る。
……あんずのジャムも美味しい!
スコーンを頬張りながら、軽く目を見開く。
実はマヤは、スコーンには圧倒的な “クロテッドクリーム派” なのだ。
スコーンとクロテッドクリームが主役、ジャムは脇役。
今まで、そういう認識でいた。
実際にスコーンに塗るジャムは… 苺にブルーベリー、夏みかんに… そしてもちろん、あんずのジャムも食べたことはあるが、こんなにもスコーンに合うと思ったのは今日が初めてだ。
……不思議。どうして?
疑問に思ってジャムだけを小指に取って、ぺろっと舐めてみる。
……うん。美味しいけれど、普通のあんずジャムだ。
じゃあ…。スコーンに違いがあるのかしら…?
マヤが首を傾げていると、リヴァイが訊いてきた。
「一体どうした? ジャムがそんなに美味ぇのか?」
「違うんです」
と答えてから、あっと気づく。
「いえ、違わないけど。ジャムは美味しいんですけど、でもいつもとなんか違って、それで…」
「……あ?」
要領を得ないマヤの答えに、リヴァイは眉間に皺を寄せる。
マヤはふぅっと一回呼吸を整えると、一から説明した。
「あの私、スコーンには絶対クロテッドクリームしか合わないと思っていて、なんならジャムはなくても全然大丈夫なんですけど。でもこのジャム、とても合うんです。すごく美味しい。さっき食べたスコーンとクロテッドクリームが最高すぎて死ぬかと思ったけど、それに負けてません」
「ハッ、死ぬとか」
「だって、それくらい美味しいんだもの」
「それは良かったな。……それで?」