第23章 17歳
ティーポットから二杯目を注いだマヤは、ひとくち飲むとにっこりと微笑んだ。
「こんなにも美味しい紅茶をブレンドするリックさんのスコーン! 絶対美味しいに決まってますよね?」
「……だろうな。俺は食ったことねぇから知らんが」
「一度も食べたことないんですか?」
「あぁ」
「それは…、リックさんが不服そうにするのも当然ですね」
そう言いながら皿からスコーンをひとつ手に取った。
「兵長、見てください。立派な狼の口!」
笑いながらスコーンの真ん中にできている横の割れ目をリヴァイの方に見せた。
「見事に割れてるな」
「はい。よくふくらんでいるし…」
“狼の口” と呼ばれる割れ目に指をかけ、綺麗にふたつに割ったマヤは、鼻に近づけスコーンの香りを確かめる。
「いい匂い…!」
バターの芳醇な香りで幸せな気分になる。
添えられていたクロテッドクリームをバターナイフでスコーンに塗ると、ひと口大に割って食べる。
もぐもぐとしっかり噛んで味わって。小麦の風味とバターの香り、そしてクロテッドクリームのミルクの甘味が口の中で溶けていく。
「おいひい!」
お行儀が悪いと思いつつあまりの美味しさに、まだスコーンが口の中に入っているのにマヤは叫んだ。
「スコーンは逃げねぇ。落ち着いて食べろ」
「はい。……ん、ん!」
慌てて飲みこんで少し喉に詰まりそうになって、こぶしで胸を叩く。
「……すみません。お見苦しいところをお見せして…」
「いや、別にかまわねぇが…」
マヤは頬を赤らめ、紅茶を飲んだ。そしてまた、スコーンにクロテッドクリームを乗せて口に放りこむ。
ひとくち噛むごとに、マヤの瞳がきらきらと輝き、頬が薔薇色に染まった。