第23章 17歳
………!
爽やかな紅茶らしい王道の香りが、鼻を抜けた。草いきれのする香り。目の前に茶畑の濃い緑が、どこまでも広がっていく錯覚にとらわれる。
茶葉を揺らす一陣の夏の強い風が吹いたかと思うと、ゆっくりと春のそよ風のように優しい香味が追いかけてくる。
……こんなにも強い香りなのに嫌味がなくて、身体にしみわたっていくわ。
オリジナルブレンドの香りに惹きつけられたマヤは、表情を引きしめてカップに口をつけた。
香りと同じく紅茶らしい王道の味とコクが強く。紅茶にとって必要不可欠な渋みは、これ以上にないほどに味と香りとのバランスが取れていて… ひとことで言うならば “心地良い”。
この完璧な味わいに舌が溺れそうになったと思いきや、飲みこんだあとにさらにまた感じさせる、喉越しの良さがもたらす爽快感。
「……美味しい…」
そうひとことだけマヤはつぶやくと、再びカップに口をつけた。
何度飲んでも、最初に感じた香気や味わいがフレッシュに存在していた。
強くて、それでいて優しい味。
夢中になって飲んでしまって、すぐに一杯目が空になる。
「兵長、やっぱりリックさんのオリジナルブレンドはものすごく美味しいです。気づいたら一気に飲んじゃいました」
マヤは二杯目を注ぐために、ティーポットに手を伸ばしながら笑った。
「俺も何度か飲んだことがあるが…」
リヴァイは少し考えている。リックのオリジナルブレンドに一番ふさわしい言葉を。
「……紅茶らしい紅茶だよな」
「はい!」
マヤはリヴァイが選んで使った表現に心から賛同した。
「紅茶好きなら誰もがうなるような… “紅茶といえばこれ” という王道の味と香りが最初に強く来ます。それだけだったら誰でも調合できそうな気もするけど、その最初の強烈なインパクトから、やわらかく包むような優しい味がほっと心にしみて…。喉越しも爽やかで。本当にすごく美味しい…」