第23章 17歳
若干…、いやかなり芝居がかった声でリックは、リヴァイとマヤの二人に自身を注目させた。
まずはリヴァイの前に置かれていた桔梗のカップ&ソーサーを左手に持ち、右手でティーポットの持ち手を掴むと、ちらりとマヤの方をうかがう。
息を詰めて自身の手許に注目しているマヤの様子に満足そうにうなずくと、リックは迷いなく紅茶を注ぎ始めた。
そしてすぐに紅茶を注いだまま、ティーポットを持った右手を高々と顔の高さまで上げる。
高い位置からティーカップに注がれる紅茶は、まるでひとすじになって落ちる美しい滝のごとし。
注ぎ終わりが近づくと、リックは高い位置まで上げていた右手をさっと下ろして、ティーポットをカップの際の際まで接近させ紅茶を注ぎ終えた。その間、3秒。
「兵士長、どうぞ。キーマンでございます」
鮮やかに紅茶を注いだリックは、優雅な物腰で桔梗のカップ&ソーサーをリヴァイの前に置いた。
「お見事です、リックさん!」
手を叩いて自身を讃えるマヤの方に体を向けて優雅な笑みを浮かべたリックは、速やかにオリジナルブレンドの入ったティーポットと桔梗のカップ&ソーサーを手に取った。そして目にも留まらぬ速さで紅茶を注ぎ始めたかと思うと、先ほどと同じく紅茶を注ぎながらポットを高い位置まで上げて、一滴もこぼすことなく注ぎ終えた。
「ウィンディッシュ様、どうぞ。オリジナルブレンドでございます」
「……ありがとうございます…!」
華麗な技で淹れられた紅茶が今、目の前に置かれた。
「素敵でした…。その… 高いところから注ぐ淹れ方…」
マヤは何かを言うのをためらっているような様子を見せて、下を向く。
だがすぐに、意を決したように顔を上げた。