第23章 17歳
「ほぅ…」
「サインを見たとき、なんか覚えがあって…。思い出せて良かったです」
すっきりしたマヤは、もうすっかり笑顔だ。
つづけて “このカイン・トゥクルの描くヒロインの顔が、ペトラに似ていること” をリヴァイに伝えようとしたとき、リックが厨房から出てきた。
「お待たせいたしました」
大きな丸い銀盆にティーポットが二つ、カップ&ソーサーにシュガーポット、そしてスコーンの皿が乗っている。
かちゃりと目の前に置かれたカップ&ソーサーを見て、マヤは思わず声を上げた。
「兵長、これ…!」
それは、桔梗のカップ&ソーサー。
先ほど、あのマホガニーのカップボードの前で心を奪われた美しい桔梗のカップ&ソーサーが今、目の前に。
「ここは気に入ったティーカップで紅茶を飲めるんだ」
リヴァイの説明に目を丸くしてマヤはリックを見上げた。
「リックさん! 私…、さっきこのキキョウのカップを見つけて、本当に素敵だなって見惚れてたんです。他のカップも素敵ですけど、キキョウには思い入れがあって特に…」
目の前に置かれたティーカップにもう一度目をやると、その優美な姿に何度でも見惚れてしまう。
「あっ、でもよくわかりましたね? 私がこのカップを気に入ったって…。なんだか魔法みたい…」
白くてシンプルな形のティーポットやシュガーポット、スコーンの皿を置いていたリックはにこやかに笑った。
「それは簡単なことですな。兵士長が魔法をかけたんです」
「え?」
「ウィンディッシュ様がお気に召したようだから、このティーカップを使うようにと…」
「………!」
マヤは思わずリヴァイの顔を見る。
「ありがとうございます、兵長…。すごく嬉しいです…」
「あぁ」
頬を染め、視線を絡めている二人にリックは告げる。
「さぁ、おニ方。お淹れしますので、とくとご覧あれ!」