第23章 17歳
「はっはっは、“紅茶バカ” ですか。それはいい」
リックはマヤが口にした “紅茶バカ” に大笑いすると、嬉しそうに話しかけてくる。
「私も “紅茶バカ” の端くれです。お父上とは気が合いそうですわい」
「あの…!」
マヤは先ほど想像してみたことを、リックに伝えようと思った。
「リックさんは昔、王都でお店をひらいていたんですよね?」
「いかにも」
「私が小さかったころに父が、何回か王都に行ったことがあるんですけど、いつもお土産にデブナム・リドリーの茶葉を買って帰ってきたんです。もしも父がお土産を買った紅茶屋さんがリックさんのお店だったら…」
リックはその真っ白なあご鬚に無意識に手をやりながら同調した。
「なかなか想像力がたくましいですな。ウィンディッシュ様が幼かった時分なら… 10年ほど前のことですかな…。確かにその可能性はありますな」
「ほんとに?」
「ええ。私は間違いなく10年ほど前は王都で看板を掲げていましたので」
「うわぁ、じゃあリックさんと父… “紅茶バカ” 同士が顔を合わせていたのかもしれないんですね」
「そうなりますな」
「ふふ、そう考えると楽しいです」
「紅茶バカ同士が顔を合わせ、何年も経ってから違う紅茶バカが、紅茶バカの娘を紅茶バカのところへ連れてきた…。人生これ紅茶バカなり」
「おい、爺さん。俺も紅茶バカなのかよ」
「左様で。兵士長はかなりのバカでいらっしゃいますよ?」
「ハッ、勝手に言ってろ」
「ふふ」
リヴァイとリックのやり取りにマヤが思わず笑ってしまうと、リヴァイは少しばつが悪そうにマヤに訊いた。
「おい、注文はもういいのか? スコーンは?」
「あぁ、はい。スコーンもいただきたいです」
マヤはメニューの右下に書かれているスコーンの説明に目をやった。