第23章 17歳
「あっ、はい」
マヤがメニューから顔を上げると、リヴァイが離れたところで立って待っていたリックを、視線ひとつで呼び寄せるところだった。
「お決まりですかな」
「あぁ、俺はキーマンをストレートで。マヤは?」
「私はオリジナルブレンドをストレートでいただきます」
オリジナルブレンドを注文したマヤの選択に、リヴァイは思わずつぶやく。
「……それが一番間違いねぇな。初めての店では」
それを受けてリックがおだやかな笑みを浮かべた。
「左様でございますな、兵士長。ウィンディッシュ様は心得てらっしゃる」
「それはそうだ、爺さん。気を引きしめて淹れた方がいいぞ」
「……おや? それはどういう…?」
「こいつの…」
リヴァイは向かいに座るマヤをちらりと見ながら。
「実家は爺さんと同じ商売をしている」
「ほぅ! それはそれは」
リックは大仰に驚いてみせたのちに、マヤに向かって頭を下げた。
「このリック・ブレイン、不肖ながら心して淹れますので、どうかお手柔らかに」
慌てたのはマヤだ。
「……そんな! うちは田舎の小さな紅茶屋です。リックさんのお店とは比べものにならないほど、売っている茶葉も少ないですし…」
「いやいや、ウィンディッシュ様。店の規模や扱っている茶葉の種類の数は、本当に美味しい紅茶を淹れられるかどうかには関係ありませんよ」
リックがそう言えばリヴァイも “そのとおりだ” と言わんばかりにうなずいている。
「どれだけ紅茶に情熱を注げるかどうかが、紅茶専門店の店主たるものの一番の資格だと思いますよ?」
リックの言葉にマヤの顔がぱぁっと輝く。
「それなら、うちの父は誰にも負けません! 紅茶バカですもの」