第23章 17歳
白い扉から奥の部屋へ。
それはまるで秘密の部屋へ招待されたような、そんな気持ちを抱えて。
マヤがリヴァイと連れ立って入ったその部屋は、今までいた茶葉の販売スペースより何倍も広かった。こちらも同様に天井から壁、床に至るまで白で統一されている。
「うわぁ、広いですね」
ただでさえ広い空間に配置されているテーブルは、意外と少なくて三卓のみ。そして各テーブルにセットで置かれている椅子は二脚であるからして、ここに入る客の定員数は六名になる。
「あらためて、いらっしゃいませ。こちらへどうぞ」
厨房に通じているだろうとおぼしき扉の前に静かに立っていたリックが、にこやかに案内した席は一番奥の窓際だ。
二人が座るのを待ってから、小脇に抱えていたメニューブックをそれぞれに差し出した。
メニューは見開きで左側にはホットティーとアイスティー、それぞれにストレートティーとミルクティーで飲むのに最適な銘柄がいくつかピックアップされて記されている。そして右側にはフレーバーティーとスコーン。
……意外と普通だ…。
メニューに目を通したマヤは口には出さなかったが、そう思った。
先ほど販売スペースで圧倒された茶葉の種類。紅茶屋の一人娘として度肝を抜かれた。
だからきっと喫茶スペースのこちらでも、見たことも聞いたこともないようなメニューが揃っているのだろうと予想していたのだ。
だが紅茶はすべて、マヤのよく知っているものであったし、菓子はスコーンの一種のみ。いわゆる伝統的なクリームティーのスタイルだ。
……さすが “紅茶専門店”。うちとは違う…。
マヤがそう思っているところへ、リヴァイが訊いてきた。
「……決まったか?」