第23章 17歳
そうやって心の中であれこれと思いながら順に見ていくと。
「………!」
あるひとつのティーカップの前で息をのんだ。
「マヤ?」
カップボードの前をゆっくりと横に移動しながら、ティーカップをひとつひとつ丁寧に見ていたマヤの足が止まり、驚いた様子で目を見開いている。
何ごとかとリヴァイは思わず名前を呼んだ。
「兵長…。これ…」
マヤの声がわずかだが、震えている。視線の先には白磁のティーカップ。青紫色の花が外側に描かれている。ソーサーにも同じ花が。
「この花は…」
リヴァイはすぐに、マヤが驚いている理由を理解した。
「キキョウだな…」
「はい。初めて見ました…。キキョウのカップがあるんだ…」
行きがけに道端で綺麗に咲き誇る桔梗の花を見つけた。リヴァイ兵長に祖父母の桔梗にまつわるエピソードを話したばかり。
そしてまた、この素敵な紅茶専門店で、桔梗のティーカップに出会えるなんて。
……すごい偶然。すごい… めぐりあわせ。
マヤが心の内でそう思っているところへ、低い声が聞こえてきた。
「さっき道で咲いているのを見たばかりだが…。すげぇめぐりあわせだな」
「兵長…、私も同じこと… 思いました」
マヤは胸がいっぱいになる。
桔梗の花のティーカップに出会えたことも。
リヴァイ兵長が、全く同じ気持ちでいてくれたことも。
あらためて桔梗のティーカップをまじまじと見つめた。
透明感のある乳白色が上品に光を放つ白磁がベースだ。とても薄く、もし手に取ったならば恐らく非常に軽量でなめらかな手ざわりだと思われる。
混じりけのない白をキャンバスにして、鮮やかな青紫色で桔梗の星型の花弁が、みずみずしい翠色で葉と茎が描かれている。
とても清楚で上品な美しさをまとう逸品だ。