第23章 17歳
「でも… 見てください。きっとご存知ですよ?」
マヤにうながされて、そのティーカップの内側を覗きこめば、道端で見かけたことのある白く真ん丸な花が描かれている。
「……見たことがある花だな」
「そうでしょう? よく咲いてますから。それでね、この花の葉っぱは三つ葉なんですけど、四つ葉のものもあるんです。滅多にないから幸運の四つ葉のクローバーといって、見つけられたら幸せになれると言われています」
にこにこと笑いながら、四つ葉のクローバーとやらの説明をするマヤ。
その嬉しそうな顔を見ていると、なぜかリヴァイは面白くない気持ちでいっぱいになっていく。
「それは…、ラドクリフから聞いたのか?」
「……何がですか?」
意味がわからず訊き返すマヤ。
「……だからその四つ葉のクローバーとやらの話を、ラドクリフとしたのか?」
「……いいえ?」
なぜそのようなことを訊くのだろうと不思議に思い、声色にも反映される。
「四つ葉のクローバーのことは、分隊長に教えてもらわなくても知ってますし…?」
「そうか…」
……ならいい。
リヴァイは、またもや自身ではよくわからないままに安堵の気持ちが広がっていく。
「カップの花に合わせて、ソーサーのデザインも変わるなんて素敵です」
マヤはラドクリフ分隊長とクローバーの話をしたのかと訊いてきたリヴァイ兵長のことを少し変だなとは思ったが、それよりも目の前に並んでいる多種多様なティーカップたちが気になって仕方がない。
シロツメクサのカップと四つ葉のクローバーのソーサーの隣に飾られているカップ&ソーサーに意識が移った。
……これは薔薇ね。
薔薇の花がモチーフのティーカップは数多くあるので、めずらしくもなんともないのではあるが、今目の前にあるものは持ち手が薔薇の葉の形になっていた。
……薔薇の花が描かれたものはよくあるけれど、葉っぱの形の持ち手だなんて。本当にこのお店には、見たことのないものがいっぱい!